南アフリカ ケープタウン大学大学院に留学している、Saoriです。2019年から留学を開始して、現在は博士課程2年生です。
研究分野は「HIV陽性の母親から生まれた幼児(HIV陰性)の免疫について」。医学部キャンパスにある施設で研究を行っています。
「発展途上国の南アフリカで研究するとはどういうことなのか?」
今回はメリットとデメリットを踏まえて、現地の研究室での様子をお伝えしようと思います。
もくじ
この記事の[結論]を先取り!
南アフリカで研究するメリット&デメリット
[メリット]
- ケープタウン大学(UCT)ではハイレベルな教育を受けられる。
- 国際色豊かな教員と学生が集まる。
- 女性のPI(研究室主催者)が多い。
- UCTは世界的に影響力のあるHIV研究機関。
- 充実した研究設備でHIV関連の臨床治験が思いっきりできる。
[デメリット]
- 試薬が届くのが遅い、時には輸入する必要がある。
- 計画停電によって実験にも支障がでる。
- 機械が古めで、故障が多い。
南アフリカ ケープタウン大学について
ハイレベルな教育を受けられる
ケープタウン大学は国内だけでなく、アフリカでトップの教育機関です。
Times Higher Education 2020の世界大学ランキングを見てみます。ケープタウン大学はoverall scoreが136位となっています。
東京大学 36位、京都大学 65位。以降は251-300位に東北大学と東京工業大学がランクインしています。
つまり、ケープタウン大学の教育レベルは、日本の大学と比べても劣っていないことが判明。
HIV研究において世界で最も影響力のある研究機関
2019年11月にElsevierが発表した“HIV/AIDS研究における近年の世界のトレンド”によると、HIV/AIDS関連の論文(2014-2018)のインパクトで、ケープタウン大学が研究施設として世界ランキング一位という結果に。
エルゼビア(Elsevier B.V.、エルゼビア・ベーフェー) は、オランダ・アムステルダムを本拠とする国際的な出版社。医学・科学技術関係を中心とする世界最大規模の出版社で、学術雑誌も多数発行している。
臨床治験に関する論文は研究としてもインパクトがあるため、ケープタウン大学が選ばれたのだと思います。
南アフリカ ケープタウン大学で研究してて思うこと
メリット
国際色豊かな教員と学生が集まる
上でも述べたように、ケープタウン大学はアフリカ大陸の中でもトップの大学。
国内だけでなく、他のアフリカ諸国や、その他の先進国から優秀な学生が集まっています。
教員も、先進国で学位を取得してからケープタウン大学の教員(PI)として来ている先生方や、アメリカやイギリス出身の先生方もいます。
バックグラウンドや年齢、宗教の異なる人たちが集まる多様な環境は、とても過ごしやすいですし、違った価値観を知る機会になっています。
充実した研究設備
研究を行うのに気になる設備。
経済的に発展している南アフリカでは、研究を行うのに必要な研究施設が一通り揃っています。
多くの女性のPI(研究室主催者)がいる
南アフリカで研究を開始するようになって気付いたこと、それは日本に比べて女性で研究室を主宰している人が多いということです。
日本で学部と修士過程をしましたが、研究室の主催者(PI)は専ら男性。私の周りでは、数人ほどしか女性のPIに出会っていませんでした。
女性が率いている研究室が多いということは、それだけ南アフリカでは女性が研究者として成功できる可能性が高いと感じています。
HIVの臨床治験関連の研究が思いっきりできる
私の場合は、HIV研究を学部と修士生でやってきて「臨床治験に関わってみたい」と強く思うようになったのが、ケープタウン大学へ研究留学する動機になりました。
この記事をみている方の中には、アフリカでの研究に興味を持っている人もいるかと思います。
「なぜアフリカなのか?」
その動機がしっかりしていれば、南アフリカでの研究も悪くないと思いますよ。
デメリット
では、次にデメリットです。
発展途上国で研究をする際に経験するであろう点をまとめました。
試薬が届くのが遅い
日本では試薬を注文すると2-3日で届いていたものが余裕で1-2週間かかります。さらに、頻繁に注文されない試薬の場合は、他国から輸入することになるので、さらに時間がかります(そのぶん価格も高くなります)。
したがって、研究に必要な試薬を余裕をもって全て揃え、プロジェクトに支障がないよう気をつける必要があります。
計画停電によって実験に支障がでる
最近頻繁に起きているのが、南アフリカの計画停電(Load Shedding)。
南アフリカでは電力不足から大規模な計画停電が実施され、混乱が広がっている。電力不足の背景には、国営電力会社Eskomの経営難がある。Eskomの発電能力は45,000メガワット(MW)だが、施設の老朽化などにより、現在は27,000MWの需要にも応えられないという。
ケープタウン大学の病院エリアは停電が起こらないようですが、研究室が位置している施設は計画停電の影響を受けています。
日によっては昼間に停電が起こる場合もあるので、実験に支障が出ることもあります(このEskomの電力問題がいつ解決するか分かりません)。
機械が古め
必要な機械は一通り揃っていますが、古めのバージョンであることもあります。他の研究室とシェアして使用している場合も多くあります。
機械の故障が多い
古めだからだと思いますが、機械が故障することが多々起こっています。計画停電が機械にも支障をきたしているみたいですね。
大切なサンプルが入っている冷凍庫が壊れると大変なのでハラハラしてます(汗)
外部リンク
https://www.elsevier.com/connect/new-elsevier-report-charts-global-trends-in-hivaids-research
まとめ
以上、アフリカで研究するなかで私が感じているメリット&デメリットでした!
南アフリカで研究するメリット&デメリット
[メリット]
- ケープタウン大学(UCT)ではハイレベルな教育を受けられる。
- 国際色豊かな教員と学生が集まる。
- 女性のPI(研究室主催者)が多い。
- UCTは世界的に影響力のあるHIV研究機関。
- 充実した研究設備でHIV関連の臨床治験が思いっきりできる。
[デメリット]
- 試薬が届くのが遅い、時には輸入する必要がある。
- 計画停電によって実験にも支障がでる。
- 機械が古めで、故障が多い。
「日本の研究環境って恵まれていたんだなあ」とありがたみを南アフリカに来てから感じています(笑)
まあ、研究に必要なことは一通りできるので、オーバーオールまあ良いかなと思っています。
Great content! Super high-quality! Keep it up! 🙂